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2019/05/19 10:50


★★★長靴をはいた猫~フランスの猫~★★★

銅板画「長靴をはいた猫」は、「世界をめぐる猫」フランス編です。
シャルル・ペローの有名な童話のあの猫ですね。
版画の四隅に王様と女王様を配置して、うしろに猫馬車?を。下で見上げているのは猫プリンセス。

長靴~といえばこの絵が有名です。世間一般の「長靴をはいた猫」イメージは、みんなここからでは?と思います。

ギュスターブ・ドレの挿絵本から。繊細ですごいですね。ペン画だと思いますが。
帽子・マント・腰ベルト?・そして長靴が、いかにもフランスの騎士っぽくかっこいい。


私は、バレエの舞台を見に行きました、
フランスのローラン・プティバレエ団が、バブル時代によく大阪にも公演で来日していたのです。
主役の猫を演じて踊るのは、パリ・オペラ座のエトワール、パトリック・デュポンでした。
今現在はもう、50代半ばぐらい?「エトワール=星」とは、プリンシパル、つまり主役級を踊るスターのことです。
その公演時のデュポンはまだ20代で、とにかくよく「跳んで」ました!


↑こんなんでした(笑)。
「千里の道も、ひとっ飛び」というぐらいだから、素晴らしい跳躍力が無いといけないのですが、舞台を狭しと跳びまくる彼の姿が強烈に目に焼き付いていて、先に挙げたドレの絵よりもインパクト大でした。
なので、「長靴をはいた猫」を版画にする時は、「跳ぶデュポン」のイメージでいこう、と決めてました。

…ここで物語を忘れておられる方に少し説明すると…
貧しい粉屋の3兄弟、お父さんが亡くなって財産分け、となりました。
上の兄たちは風車小屋やロバや金目のものをもらえたのに、末息子に与えられたのは、小さな猫1匹だけ。
腐っていると、猫は「まあまあ。私はあなたのためにめっちゃ働きますよ!見ててください!」と慰めて、その知恵を働かせて大活躍します。
バレエ版でも、コミカルな演技を得意としていたデュポンの踊りが冴え、人間たちをだましてイタズラする場面は爆笑モノでした。笑いに敏感な大阪公演だったからか(笑)。
最終的には、猫は末息子を国のお姫さまと結婚させ、末息子大出世!猫もたんまりごほうびをもらいました。
で、結婚祝福パーティが開かれるのですが、その仮面舞踏会で、なぜか猫はとても「孤独」を感じます。
自分を頼って可愛がってくれた末息子は、猫のお手柄など忘れ、すっかりお姫さまに夢中。
そして人間たちは、猫になど目もくれず。
なんだか悲しい疎外感を感じつつ、舞台は幕を閉じました。
シャルル・ペローって、「赤ずきんちゃん」とか「シンデレラ」とか書いた人ですよね。
いずれも、よく読むと怖いというか、決してハッピーで可愛いお話でもありません。
「毒気のあるユーモア」が、にじみ出ているのが、フランスという国の文化の特徴なのかな、とバレエを観てても少し思ったことでした。

ローラン・プティという人はもともと自分もバレエダンサーでしたが、自分でバレエ団を旗揚げして、王道をいく大御所バレエ団とはまた違う、独自路線を歩みました。
振付や演出、舞台美術など、おしゃれでユニーク。「エスプリが効いてる」とはまさにこういうことを言うのだな、と感嘆しました。「ビタースウィート」なんですよね。
版画版では、猫の足が短いから、開脚してジャンプさせるのが、すごく難しかったです(笑)★