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2019/04/12 14:53





★★★ショーン・タン「アライバル」★★★

絵のアイデアで煮詰まっているとき、よく図書館に行きます。
そこで偶然みかけたのですが、こんな作家さんがいるなんて。
1974年オーストラリア生まれの作家でイラストレーター、ショーン・タンさんの作品「アライバル」です。
大型の絵本なのですが、子供というより大人向き。
著作権上の問題があるので、ちょこっとだけ画像を紹介させて頂きます。

セリフが一切なく、全編セピア調のコマ割りマンガのごとく物語が進みます。
まるで、古い古い無声映画のよう。。。
読みかけてすぐ「ニュー・シネマ・パラダイス」とか「ライフ・イズ・ビューティフル」を連想しました。
(「あとがき」に「映画“自転車泥棒”も参考にした」とあります)

絵が素晴らしく、文章がないのに全てが伝わってきます。
「たぶんこういう意味かな?」と、読む側にも想像力が必要で、そこがいい。
主人公の男の人が、どこか怖い国の戦火?から逃れて大きな船に乗り、巨大で奇天烈な国に上陸します(これはアメリカ?)。
検査を受けて部屋を借り仕事を探し…男の人は故郷に家族を残してきた移民なのです。
殺風景な独房のような部屋を借り、でもそこにヘンな小さな生き物がいたり。
この「ヘンな生き物」は、良き相棒になってくれます。
↑すごく可愛い!
懸命に働き、月日がたちいろんなことが起こって。。。ついに。。。

絵本にしてはすごいページ数なので、すぐ読むのが勿体なく、何日もかけて読む。
というか、「買わねばならない一冊」でしょう。味わいちゅうか熟成が違います。
壮大なファンタジーなのに、「絵空事」ではないリアリティ。
人物や建物はデフォルメしてなくて、リアル描写なのに、出てくる町や自然や世界は極めて空想的で。
この人の妄想力に恐れ入ります。
でも、「妄想」なのに、この現実の地球にある・起こる「何か」を連想させるのです。
戦争だったり、爆撃だったり、人種差別だったり。
もちろん「愛」も。
テーマは深いのに、絵本という体裁をとっているので、誰でも入っていける。
ちいさな子供が読んでも「何か」を感じとれることでしょう。

ショーン・タン氏のお父さんは、マレーシアからオーストラリアに1960年に移住してきたそうです。
きっとさまざまな軋轢があったことでしょう。
その影響もあって作られたかのようなこの絵本は、4年の歳月がかかったそうです。
本当によみごたえがあって、また、「絵のもつ魔法」にひたりきることが出来ます。
それぐらい素晴らしい。

「The Lost Thing」という作品で、短編アニメーション部門のオスカーも受賞しているということですが、
ぜひ見てみたいです★